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 ガロは強かった。襲い来る何人もの人狩りを、刀の一閃でなぎ倒した。同じような刀やナイフをもつ相手を、まさに獣の強さで圧倒した。  もしかしたら、ガロは勝てるかもしれない。言われた通り、木陰に身を隠しながらシオはその様子を見つめていた。自分が武器も何も持たない足手まといであることが猛烈に悔しかった。自分に闘う才能があって、もっと訓練を積んでいれば、隠れていろだなんてガロも言わなかっただろうに。  何かが破裂する音がした。初めて聞く音で、それが二度、三度と続いた後、ようやく銃声であることにシオは気が付いた。薄闇の中、ガロが膝をつくのが見えた。  ガロと叫びそうになり、自分の両手で自分の口を塞ぎ、必死でそれを堪えた。ガロ、立って、立って! 震える身体で、今にもガロの元に走り出しそうになる。だがそうすれば、ガロの傷を無駄にしてしまう。  敵は僅かにあと二人。銃を持つ相手をガロの刀が薙ぐ。振り向きざまに背後の相手へ切りかかろうとする。一瞬早く敵の刀が振り上げられ、光が宙を舞った。  シオの目の前に、刀が突き立った。弾き飛ばされたガロの刀だった。  地面に倒れるガロの胸に、刃が突き立てられた。その刃を握りしめ、最後の抵抗と共にガロの喉から咆哮が迸った。狼男の散り際は、長く長く響き渡り、空気をびりびりと引き裂いた。  引き裂かれた空気の振動が収まると同時に、駆け抜けたシオは両手で握りしめた刀を振り下ろした。  人狩りの青い制服が肩から腰へざっくりと裂ける。間髪入れずに、ぐらついた相手の首へ刀の先を滑り込ませた。肉を貫く感触が両手に伝わるが、シオはひるまずそれを左に振り切る。  声も上げずに、人狩りは絶命した。大きく傾いだ身体は地面に倒れ伏した。  シオは息を切らしながら目元に散った血を左腕で拭った。頭から浴びた返り血は生ぬるく、鉄のにおいが辺り一帯に充満している。  人狩りのそばに、白い面が一つ落ちていた。無機質な顔のパーツが無表情を作り出している。面が外れ、皮一枚で繋がっている人狩りの首は、人間の男のものだった。目を見開き、鼻と口から血を垂らし、息絶えている。  ガロのそばに歩み寄ると、握りしめていた刀を地面に置き、シオはその胸に突き立っている刀の柄を両手で握った。深く真っ直ぐに刺さった刃を、ぐっと力を入れて引き抜いた。濃い赤色がどろりと胸の穴から零れ落ちる。ガロの右手がまだ刀を握っていたから、両手を使ってほどかせた。随分と硬く、一本ずつ指を剥がさねばならなかった。
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