第十話 バンクと人間の町

3/3
前へ
/12ページ
次へ
「へえ……、それじゃ、その魔法使いの女の子を捜してるってわけね」 「心当たりはないか」 「うーん、金髪の赤い瞳でしょ。それはもうリルコットしかいないわよ」 「リルコット?」  バンクの質問には答えず、リアがコーヒーを指さし「砂糖入れるわね」と、リアが細長い袋とスプーンを棚から出し、袋の上の方を破りカップに切り口を向ける。さらさらさらと白い粉が入っていく。リアがスプーンでカップの中をくるくるとかき混ぜると、バンクに差し出し、まあバンクの向かいに座る。 「何を入れたんだ」 「だから、砂糖を入れたのよ」 「砂糖?」 「あなた砂糖も知らないの? さすが五百年も洞窟にいただけのことはあるわね」  リアが呆れにも似た声を出すとバンクはムッとした。 「元々人間とは違う食べ物を食べてきているんだ。知らないのも無理はないだろう」 「あなたお友達から本を借りたこともあるんでしょ。何も聞かなかったのね」 「本といっても人間とモンスターが戦う話だ。しかもほとんどモンスターが悪者扱いだ。あいつの趣味はよく分からない」  バンクはカップを持ち上げると、恐る恐るコーヒーをすすった。なるほど今度は甘い感じでわりと飲みやすい。  ――って、最初からこれを入れろよ。 「飲みやすくなったでしょ?」 「……」  バンクは答えるのも癪なのでそのまま黙ってコーヒーをすすった。リアが頬杖をつきながらバンクをいたずらっぽい目で見ていた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加