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第十話 バンクと人間の町
「キャー、何か変なのがいるー!」
「ほんとだ、もしかしてモンスターじゃないのか?」
「捕まえろ、捕まえろー!」
「はあ、はあ、俺が何したっていうんだー!!」
バンクは逃げた。
バンクは初めて、人間が住む町にやってきていた。バンクとは違い、肌の色は青くない。これが人間というやつか、自分とは違いちょっと貧弱そうだな、と思いながら見ていた。
バンクは友人から見せてもらった本を思い返しながら、もしかしたら自分のことを見て怖がる人間もいるかも知れないと思い、うかつに顔を出せず、物陰に隠れながら話しやすそうな人間を探していた。
そんな時だった。
小さな人間が――おそらく人間の子供だろうが――バンクに近づいてきてバンクのことを物珍しそうに見ていた。
――これが人間の子か? これまたずいぶん小さいな。
そう思いながら見つめ返していると、突然子供が手を握りながら叫んだ。
「キャー、何か変なのがいるー!」
その言葉に一斉に町の人たちが物陰に隠れていたバンクの姿を捉えた。子供は近くにいた女のところへ走っていく。女はキッとバンクを睨みつける。
――おいおい、俺が何したっていうんだ……。
その他にも怖い目で見る人、好奇の目で見る人、自分の体と比べる人など、様々な反応をする人を見てバンクは戸惑ってしばらく体が動かなかった。
が、そばまで来た男たちが
「ほんとだ、もしかしてモンスターじゃないのか?」
「捕まえろ、捕まえろー!」
と言うので、バンクは慌てて走り出した。
逃げるバンクを追いかけ回す町人たち。大人も子供もあちらこちらからバンクに向かって体当たりしたり水を被せたり落とし穴に落とそうとしたりもした。
「はあ、はあ、やめてくれ! 俺は町を襲うために来たんじゃないんだー!」
バンクは叫びながら町を横断していった。どこか隠れられそうな場所はないか、と周りを見ながら走っていると、「こっちよ!」と声が聞こえた。
声のする方を見ると、女が岩陰から出てバンクに合図を送っている。バンクは行こうか迷ったが「早く来なさい!!」と怒号が聞こえるので慌てて女の方へと向かった。
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