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第四話 バンクの休暇という名の
洞窟から秘密の通路を通ったところにモンスターを統率するレヴァートの城がある。
雷が空高く鳴り響く中、バンクは王座に向かって土下座をしていた。
「バンクよ、お前は私に何か言うことがあるんじゃあないか?」
「レ、レヴァート様、どうか怒りをお鎮めください!」
レヴァートと呼ばれた男は低く威厳のある声でゆっくりとバンクに問いただす。
「お前が宝の番をしてきて今日で五百年目だな、そうだな?」
「は、はい。ですが、その……」
「私は日頃のお前のその偉大な功績を称えて褒美を多くとらせようと考えていたのだが?」
「は、はい。恐縮でございます、ですが……」
レヴァートがバンクを責める口は止まらない。バンクは恐怖で体全身を震わせていた。
「バンクよ、先ほどから震えているようだが、私は何も貴様を処分しようだとかクビにしようだとかこの城の地下の奥深くに埋めようとか考えているわけでは決してない」
「でしたらそんなリアルに想像できることを仰らないでくださいよお……」
バンクは土下座から少し顔を上げ、上目遣いにレヴァートを見る。
「というわけでだ、お前にはしばらく休暇を与える」
「きゅ、休暇でございますか?」
バンクは土下座の姿勢から少し体を起こす。自分の顔が紅潮しているのを感じる。だが次の言葉でそれももはや空想だと感じた。
「そうだ、無休という名の休暇だ。お前はこれからその宝を取り戻すべく休みなく働きなさい。それができたらこの城に戻ってもよい。できると信じておるぞ。何しろ、五百年も番が務まったんだからなあ?」
「は、はは……」
バンクは、こりゃクビになった方がましだと思った。
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