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男:2
クロード「この気配は……フォイア様、ですね? 隠れてないで、出てきたらどうです?」
フォイア「流石は魔王の側近。俺の気配に気づくとはな」
クロード「ふふ、あなたはご自分が思っているより、隠れるのに向いていないんですよ。殺気、ダダ漏れでしたよ?」
フォイア「抑えていたつもりだったんだがな……」
クロード「それで、四天王最強のあなたが、私のような雑用係に、なんの用ですか?」
フォイア「貴様の座を奪いに来たのだ」
クロード「つまり、魔王様の側近になりたいと?」
フォイア「あぁ、そうだ。そのために闇討ちをしようと思ったのだが、気づかれてしまったからな。決闘を申し込む」
クロード「やめておいたほうがいいと思いますよ?」
フォイア「ほう……。つまり、こう言いたいのだな? 俺では貴様に勝てんと。随分と舐められたものだな」
クロード「いえ、違います。シンプルに向いてないと思いますよ、側近」
フォイア「そう言って諦めさせようという魂胆だな?」
クロード「違いますって。わたくしに決闘を挑むのは結構ですが」
フォイア「ダジャレか?」
クロード「違います。偶然の産物です。ごほん。側近の仕事はとても大変なんです。まず、勇者と呼ばれる人間が現れたら、それを把握しなくてはいけません」
フォイア「それは貴様の仕事だったのか? てっきり、魔王が水晶か鏡で見ていると思っていたが」
クロード「いいえ、わたくしです。魔王様はめんどくさがりなので、その辺の雑用はわたくしに任せます」
フォイア「勇者を見つけることが、雑用だと?」
クロード「魔王様の様子を常に観察し、今日何を食べたいのかを予想し、シェフに伝えなくてはなりませんし、あの方、事あるごとにサボろうとするので、注意しないといけません」
フォイア「魔王は子供かなにかだ?」
クロード「弱いぶん、子供のほうがマシですよ……。あんなバカみたいに魔力を持った怪力に駄々をこねられては、たまったものではありません」
フォイア「魔王が、駄々を……」
クロード「魔王様のお世話をしつつ、自分自身も鍛錬したり、あなた方に仕事を割り振ったり、強くて知能のある魔物をスカウトしたりと、休む暇などありません」
フォイア「なんというか……、大変だな」
クロード「えぇ、大変です」
フォイア「側近は諦める」
クロード「それが賢明でしょうね」
フォイア「よかったら、1杯どうだ? 息抜きも大事だぞ」
クロード「ふふ、お優しいですね。では、お言葉に甘えて」
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