はじめに

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『なんだよ、嬉しくないのか?』 「嬉しいわけないだろ? お前と話せるようになっても、良い事なんか何も無い。」 『そうかな?旅は道連れっていうじゃないか。 僕がついていってやるよ。』 「なに?旅についてくる?」 『そうさ。嬉しいだろう?』 あまりにも自信過剰な黒猫に、僕は思わず吹き出した。 『そんなに嬉しいのか?』 「あぁ、最高だな。」 どうかしている。 僕は猫と話している。 話して笑っている。 そうか、僕はそこまでおかしくなったのか。 それなら、それで良い。 この黒猫と話せるという特殊能力をありがたく使わせてもらおう。 「おまえ、名前はなんていうんだ?」 『僕は人に飼われたことがない、生粋の野良猫だ。 名前なんてあるはずがない。』 「しかし、旅の相手に名前がないって言うのも困りものだな。 ……ロジャー、そうだ、お前は今日からロジャーだ。」 『勝手に付けるなよ。』 「僕はダニエルだ。よろしくな、ロジャー。」 『……わかったよ。よろしくな、ダニエル。』 僕はロジャーの片手を握った。 握手のつもりだ。 ロジャーはされるがままになっていた。 サーシャがこの光景を見たらどう思うだろう? 黒猫と旅の相棒になり、握手をしてるんだ。 完全にいかれてる。 おかしくなった僕を憐れに思うだろうか?
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