余は国王である

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「で?」 「湯山さんに言ったら鬼みたいな形相で舌打ちされた。ああ、俺にじゃなくてお局にな。『あのババアの言った通りにやったのに文句言うとか頭の中どうなってんだ』って言って修正してた。女のいざこざに一言でも口出すと死ぬからそっと離れた」 「その人、もう辞めるだろたぶん」 「俺もそう思う。また国民減っちゃう」 「お前の国民じゃねえわ。あとは何があるんだよ、タイトルだけ言ってみろ」 ケース3 意識高い系 ケース4 押しが弱く何も言えない系 ケース5 売上が悪すぎる営業(言い訳しかしない) ケース6 商品開発しない開発部 ケース7 クレームに対して態度悪すぎるお客様相談室 ケース8 我関せずの部長 ケース9 とりあえず何もしない社長 ケース10 会社の経費で高級車に乗り換える会長 ケース11 出ない残業代と改ざんされてる勤務時間 ケース12 認められない有給と強制される休日出勤 ケース13 物を言いすぎる株主※筆頭株主ではない ケース14 何の説明もなくカットされるボーナス ケース15 何故か増えてる役員報酬 「全部まとめて、どうなってんの今」 「新しい処刑方法考え中」 「そっか」 「うん」  バキ!  ブラック企業に入ってゲッソリと痩せて、睡眠三時間となった腐れ縁の……料理人になることを誰よりも応援してくれて、修業時代はただ飯食いに来てやったぞと練習した料理を残さず食べてくれた優しい友人、優にチョップをして気絶させると電話をかけた。 「あー、もしもしおじさん? ああはい、うん。優はやっぱ辞めてなかったんで、しばらく居候します。今のうちになんとかしてください、はーいよろしく」  ガチでヤクザの優の父親に電話をして、掃除と料理を始めた。栄養ドリンクとプロテイン飲料しか出てこないゴミに顔をしかめる。そりゃ痩せるわ馬鹿、とイラっとしたところで優の電話が何度か鳴ったので、ドスきかせた声で「お前俺の弟分に随分な事しちょるらしいのう? 一回会おうやないか」と言ったら速攻電話が切れた。 「うーん……?」  美味しそうな匂いに目が覚め、起き上がると昔よく食べた半チャーハン、ラーメン、餃子セットが準備してある。そしてその料理の前に果たし状かよと言いたくなるような達筆な表題「退職届」の封筒。 「……結婚催促する女がパソコンの前に結婚雑誌置いてるみたいなやり方すんなよ」 「世の女性に謝れ。いやまあ、それは確かにウザイけど。これにサイン書いたらやる」 「ガチでヤクザみたいな事言ってるし。よくウチに就職しなかったよなあ」 「スカウトは何十回もされたけどな」  ぐう、と腹が鳴った。 「愚民よ、余は空腹じゃ」 「食べていいですよ国王様。これ書いたら」 「く……マリアンヌを人質に取るとは卑怯な」 「おい、どれがマリアンヌだよ」 「マリアンヌがのびちゃう……」 「ラーメンかよクソが。料理人魂を逆手に取りやがって。わかったよ、さっさと食え馬鹿」 「いただきます」
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