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愚民共。余は国王である。国王なので一番偉い。国王だからな。
愚民よ、国王とはどんな存在であるか? 国民から血税を搾取して贅沢三昧か?
馬鹿め。そんなことしたら国が崩壊するわ。よいか、国を背負うというのは国民に死なない程度に働いてもらって定着してもらわねば困るのだよ。
よって、国王はストレスが多いのだ。だが、イラっとしたからと言って投げ出したり八つ当たりしたら元も子もないのだ。こいつ、国王として無能だから処刑しちゃおうぜって思われたら終わりだろう?
だから、国王は常に愚民を見下しながらも寛容のふりをしなければいかんのだ。愚民には理解できぬだろうな。
ポコペン
アプリの通知だ。
『おーい。生きてるかー?』
『呼吸してる』
『今日お前ん家いくからな。首洗って待ってろ』
『首洗う前に掃除しないとお前、足の踏み場ねえから』
『掃除しろ。いやもう俺がやる、お前は飯食え』
『人に掃除やらせるくらいなら俺がやるわい馬鹿』
ふん、お節介め。さては「俺がやるって言えば申し訳なく思って自分でやるだろ」と思っての策略か。いや、まあ。こいつはそんな事する奴じゃないのはわかってるからちげえな。純粋な心配だ。あんがと。
おっといかん、国王なのに何をしておる。うっかり素が出たぞい。出たぞいってなんだよ。……こいつを愚民として見れるわけねえじゃん。保育園からの腐れ縁なのに。掃除しよ。
「来てやったぞ」
「掃除まだ終わってねえ。玄関前で待ってろ」
「ちなみにあとどのくらい」
「二時間」
「寒くて死ぬわ、入れろや。ミノムシみたいに過ごしてやろうじゃねえかよ」
そう言うと良人は勝手に部屋に入る。良い人って書いてよしと。名を体現してる。ちなみに学生時代一浪したので当時「自分の名前が浪人、に見える」と嘆いていた。さんずいに謝れお前。
「で、退職届書いた?」
「あー」
「書いてねえなこの野郎。いい加減そのブラック企業辞めろ死ぬぞ。今日からお前が退職届書くまで俺はこの家に住むからな」
「は? やめろよ」
「炊事全部やったろうじゃねえか。料理屋舐めんなよ、和洋中どれでも好きなモン作ってやろうじゃねえか」
「やめろって。大丈夫だよ俺は」
「大丈夫じゃないやつは呼吸するように大丈夫とすみませんとわかりました、を言うんだよ。お前の大丈夫はこの世で一番信用できない」
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