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入学前式 校長の言葉
「それでは、校長先生のお話です。」
壇上に上がった老紳士は、いきなり言い放った。
「君たちが本校で学ぶことは、理不尽の正当性だ。」
この学校恒例『入学前式』の会場がざわめいた。会場にいるのは、入試合格者とその保護者である。
校長は続けた。
「成績は、努力の結果などではない。
いくら頑張っても、駄目な奴は駄目だ。」
会場がさらにざわついた。
片腕をあげて、ブーイングした者もいた。
校長は冷ややかに会場を見渡して言った。
「例えば、脚を骨折したままレースに出たとして、優勝を狙えるか?」
会場はシンとなった。
「どんなに頑張ろうが、どれだけの人から応援されようが、適さない状態の者に優勝など狙えない。火を見るより明らかだ。つまり……」
校長はもう一度会場を見渡した。先ほどまでの冷ややかさはなく、真摯な眼差しだった。
「その選手が本来すべきこと……治療なくして勝利はない。
努力や気持ちでなんでもなんとかなるなんて、無駄なことは考えず、冷静に自分を見つめてほしい。
先生からは、以上だ。」
その日、生徒指導室を入学資格取り消し希望者が訪れた。
「親ともう一度話し合って、
自分のこれまでの進路を正したい。」
そう話していたという。
報告を受けた校長は、微笑んで入学資格を取り消した。
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