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第五話 洗脳大国
男は東京のとある施設に電話を掛けていた。
「大変な事になったな。まさか日本人があんな大胆な行動に出るとは思わなかったよ」
『はい。私もそう思います』
相手はその施設の幹部だ。
男は続けた。
「白昼堂々首相を射殺なんてな」
『そうですね』
「で聞いたんだが、その殺った奴はお前の所の信者らしいな」
『はい。正確には二世ですが』
「二世?家族がどうしてまた」
『詳しくはまだ聞いてませんが、どうやら幼い頃から親の信仰のせいでいじめを受けていたようです』
「なるほど。で、その逆恨みで首相を殺ったって事か」
『そうらしいです』
「そうか。しかし、これは大きくなるぞ。世論が相手じゃ、俺達は太刀打ち出来ないからな」
『はい』
「そうだな。先ずは薬漬けになっている信者どもは全員本国へ送れ」
『それは大丈夫です』
「ん?」
『今は薬を使っていませんので』
「なに、薬を使わないであんなに信者を留めているのか」
『はい。バブル崩壊以降使っていません。使う必要が無くなりました』
「そうなのか」
『日本人は何かに寄り添わなくては生きていけない奴らです。時代の不安定さが信仰の後押しをした様で、今は純粋の信仰者ばかりです』
「ほう、これは驚いた。じゃ、手間は省けたな」
『はい』
「これからやる事は唯一つ。この教団は本国と切り離す。これが消えてなくなるなで、資金の流れがバレない様に監視する事だ」
『はい』
「それまで信者を大切にしろよ。なんせ唯一の食い扶ちだからな」
『はい』
「大丈夫だ。最終的には将軍様に繋がっている事さえ隠し通せばいいんだ。バレそうになったら隣の国の名前でも出しとけ」
『そうですね。その為の教祖ですからね』
「ああ、解ってるじゃないか。あとはこの教団が何事も無く消滅すれば、お前は晴れて本国に帰れるんだ」
『はい』
「がんばれよ」
『分かりました』
そして男は電話を切り、ポツリと呟いた。
「これでいい。もう時代遅れなんだよ、信仰なんて」
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