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朝礼で馬渕に名指しされた。今月の営業成績で、真斗は一気に一位に躍り出た。「テメエら、真斗を見習え」馬渕はこれみよがしに金一封を手渡した。社員らが拍手する。もちろん誰の目も笑っていない。みな面白くないのだ。
青葉道は稼ぎやすい地域だった。ロクに話も聞かずに「いくら?」と金を払おうとする家政婦、暇を持て余した老人、世間知らずなマダム……金銭感覚のバグった人間を相手にすれば、半分の労力で倍以上の売り上げを得ることができた。
「ずりいよな。アイツ、青葉道を回ってるらしいぜ」
駅ビルの階段を降りていると、陰口が聞こえてきた。
「人妻と寝てんじゃねえの」
「ひひっ、お前じゃねえんだから」
「だって単価おかしいだろ。誰がホームセンターに行けば二千円で買える浄水器に三十万も出すんだよ」
「まあなあ。でも本当に寝てるんだとしたらギブアンドテイクだし、警察に相談されることもない。やっぱずりいよ、青葉道は」
噂をしていた二人は踊り場の自販機の前にいた。真斗は「お疲れっすー」と挨拶し、階段を駆け下り、外へ出た。今日は急いでいる。今日は、莉斗の前に峰子を抱く。真斗が望んだことだった。車に乗り込む。発進し、青葉道を目指した。
「ねえ、三人でしましょうよ。もう一人は乗り気よ」
当然だろう。莉斗はもう一人に任せようという魂胆だ。真斗は峰子の身体を抱き抱え、下から貫きながら、「そいつ、自信無くさないかな」と笑った。
「あん、どう、かしらっ……ああんっ」
「俺は嫉妬しそうだし」
「すればっ、いいわっ」
峰子の首筋に顔を埋め、ハリのない皮膚を吸い上げた。
「あっ、だめっ」
構わず吸った。莉斗がこれを見たらどう思うだろう。考えただけで興奮する。
「本当にだめっ!」
峰子が両手を突き出し、本気で拒絶した。顔を離す。
「夫にバレたらどうすんのよ」
驚いた。亭主は女房の不貞を知らないのか。てっきり公認だと思っていた。
「あんたの旦那、怖いの?」
「やめて。今はあの人のこと考えたくない」
峰子は露骨に顔をしかめた。会ったこともないのに、真斗は峰子の亭主に同情した。
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