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おまえたちはみんな独りなのだと、生物たちに夜の砂漠は語り掛ける。
月の色をした絹の布のような滑らかさで、けれどその下には無限の落下を隠す砂丘も。高いというよりは深い夜空も。矮小なわたしたちなどお構いなしに、神話を語る星や銀河も。すべてはわたしたちの孤独を彩るためにあつらえられた劇場のようだった。
遠い昔に誰かが熾した焚火の残骸に火をくべて、スーは闇に溶けてしまいそうな黒い鳥を眺めている。その烏は星明りを邪魔されないように焚火から20メートルほど離れて、枯れた木の枝にとまり星を見上げていた。その濡れ羽色をここから視認することは難しいが、彼が嘴に咥えている小さな金色のランタンがちかちかと瞬くので、自分の主の居場所がスーには分かる。
そして彼が一生懸命、短い首を伸ばしながら空へランタンを掲げる理由も。
「だめでしか。主」
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