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 その間、ただ頷きながら聞いてくれていた留美子が、最後に、 「仏の山本先生を怒らせるなんて、浩一くんもなかなかやるじゃん」  と言って笑った。  そんな彼女の反応に、浩一は、心がスーッと軽くなるのを覚えた。 「初めてだね。私にそんな話してくれたの」  そう言いながら歩く留美子の足取りも軽い。 「そうだっけ?」 「そりゃそうか。浩一くん、順調にきてたもんね……」  と、留美子は遠い目をしてから、 「ショックだったんじゃない?」  優しい視線を浩一に向けた。 「うん。正直、かなり」 「……そっか」 「外すって言われて、結構堪えた……」  絞り出すような声の浩一に、留美子は二、三度小さく頷きながら、 「わかる。私だったら、とっくに心折れてる」  留美子は、そんなふうに言ってくれた。  桜のトンネルの遊歩道。  差し込む淡いピンクの光の中を、ゆっくりと静かに歩く。 「留美子は偉いな」 「ん?どうして?」 「だって、京都に異動になっても、こうして頑張ってるじゃん」  うまく言葉にならないけど、1年振りに見る留美子は、キラキラして見えた。と、彼女は急に笑って、 「前向きに頑張れって励ましてくれたの、どこの誰よ」 「あっ……」 「まぁ、あの時はちょっと腹も立ったけどね」 「ごめん、偉そうにいろいろ言っちゃって。でも辞めるなんて言うから……」 「あぁ、あれ……もしかして、本気にした?」  また留美子は笑った。 「えっ?違うの?」 「うん……でも、本気じゃなくても、そう言うことって、あるじゃん?そうやって、心に逃げ道作る、みたいな?」 「あぁ……確かに」  頷く浩一を、留美子は申し訳なさげな面持ちになって見ながら、 「……ごめんね。心配させて」 「いや」 「でも嬉しいよ。本気で心配してくれてたんだって。元気を取り戻した今だから、そう思えるんだけど」 「うん」 「あの時は、メンタルが弱ってたから。そういう時って、励ましがただの説教に聞こえるでしょう。それで腹立って。黙って傍にいてほしいだけなのに、みたいな?勝手だよね」 「…‥わかるよ。今なら」 「そう?」  留美子はそう言って、ふと立ち止まると、浩一を見つめ、 「やっぱ、変わったね、浩一くん」 「それ、褒めてる?」 「もちろん!」  そう言って、いきなりタタタッと小走りしてから、振り返って、 「ねぇ、お腹空かない?」 「そう言えば、結構空いたかも」 「じゃ、そこの洋食屋さん、行かない?ランチが美味しいんだよ」  指差した遊歩道の脇に、お洒落な建物のお店があった。
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