2人が本棚に入れています
本棚に追加
想像満腹
男は餓死寸前だった。
仕事に恵まれず、
わずかな貯金も使い果たし、生活保護も受けられない。
生きる希望は、何も無かった。
…僕はもうすぐ死んでしまう。誰も僕を助けてはくれない!…
涙が頬を伝う。
…神はいないのか?僕は何も悪い事などしなかった。
何故こんな目に遭わなければいけないの!…
男の瞼に浮かぶのは、山盛りの握り寿司。
ビフテキ、鰻の蒲焼。
…美味しいな〜。美味しい🤤、もう食べれない満腹だ…
食べ物を空想しただけなのに、不思議に男のお腹は一杯になっていた。
久しぶりの満腹感は、男を眠りに誘う。
夢を見ているのだろうか?
僕の側に誰かが居る?
薄ぼけた瞳に映る者は、黒い衣装の男。
…死神か?僕を迎えに来たのか?さっき食べた物は幻か。…
僕は黙って死を受け入れる準備をした。
「おい、お前。目覚めろ。」
と、低い声で僕を呼ぶ。
ゆっくりと、目を開ける僕。
「どうだ、美味しかったか?これから、お前は想像しただけで、何でも食べる事が出来るのだ。
これからは、金が無くても餓死の心配は無くなるぞ」
「貴方は死神さんですか?」
と聞いたが、応えてはもらえず、
「お前は、餓死寸前までよく頑張った。
その頑張りに褒美をやろう。
それは想像した物、
全て食べ物に変える能力をお前にやる。
これからの人生は薔薇色だぞ。」
と、言い残し死神みたいな者は消えていく。
それからは、僕に空腹は無くなった。
想い浮かべる物は全て食す事ができた。
栄養失調で痩せていた身体は
今ではメタボな男。
僕には、珍しい物でもゲテモノでも何でも食べられる。
美味しい物が味わえる。
そして、働かなくても生きられる。
人生まさに薔薇だった。
でも、この幸福はいつまでも続かない。
ある日、僕は人間を想い浮かべていた。
……こんなに美味しいだ 🤤……
最初のコメントを投稿しよう!