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「……これが、ダンジョンの入り口か?」
スティンガーは、国の隣にダンジョンと言う超巨大モンスターが陣取っていると風の噂程度にしか知らなかったが、スティンガーの目の前には巨大な穴が地面に開いてるようにしか見えなかった。
その大きさは、城下町三つ分ぐらいありそうな巨大さだった。
「初めて見るか? オレ達はいつもロープを使って下に降りてんだ」
「ダンジョンは地下に居るのか?」
スティンガーの質問にイーグルと仲間達は呆れたような溜め息を吐いた。
「お前マジで何にも知らないんだな。良いか、オレが少しレクチャーしてやる」
まず、ダンジョンが最初に観測されたのは二年前だ。
超巨大な台風が横倒しになったような細長い胴体を持った石のバケモノが現れた。
その口と思われる穴の大きさは宮殿の五倍はある大きさだったそうだ。
何が目的か知らないが、ソイツは国の隣まで来たら、国を襲わずに頭から地面に突っ込んで、そのまま国の隣の地下で動かなくなってしまった。
それからだ、国王の命令で生物学者でもあるシスタースノに白羽の矢が立ったんだ。
彼女は数名の英雄を引き連れて、謎のモンスターであるダンジョンの内部に潜った。
それが全ての始まりだ。
そこは、魔王軍よりも恐ろしいモンスターが跋扈してる異空間だった。
歴戦の英雄ですら太刀打ちするのが、やっとの強さだった。
多くの犠牲を払って一年経った後に、ダンジョンは弱った人間を察知すると、自動的に捕食して、その後ダンジョン内部のモンスター達の血肉となり。そして、そのモンスターを倒すと財宝が出現する。
それが分かった後の一年間、国王は罪人をダンジョンの生贄にし、冒険者達に財宝を取らせる事業を立ち上げた。
すなわち『ダンジョンビジネス』だ。
最初は反対意見が多かったが、結局は金に目が眩んだ亡者どもの声が勝利して、現在に至るわけだ。
「どうだ? 少しは理解できたか? 勇者スティンガー」
「……オレを勇者と呼ぶのはやめてくれ。今は女だし、剣も無い、お前達と同じ金の亡者と何一つ変わらん……で? 魔術師のサラは生きてると思うか?」
スティンガーの質問に対して、イーグルはしばし考えた後に自信たっぷりに言った。
「生きてる。彼女は魔術師なのに戦士みたいにタフだからな。ドラゴンに胴体を丸齧りされても生き残った奴だ。彼女と逸れたのはダンジョンの三階層だ。あそこのモンスターは大したことは無い」
「ふーん、まぁいいや、さっさと行こうぜ」
スティンガー達は、ロープを使ってダンジョンの一階層に降りた。とても平凡な石の迷宮が目の前に広がっていた。
すると、盗賊のユグが地図を開いて、イーグルに向かって言った。
「……イーグル、急いだ方が良い。ダンジョンは二日に一回は内部の構造を変えてしまう。サラと逸れてから一日半は経っている。タイムリミットは半日だ」
「そうだな、今回はあくまでもサラの救出だ。急ぐとしよう」
イーグル達は、ユグの先導を元に探索した後に、ダンジョンの二階層に降りる為の階段の近くまで辿り着いた。
スティンガーは、これまでの道中を歩いて思ったことがある。
このダンジョンは本当に生きてるのだろうか? どう見ても人為的に作られた迷宮にしか見えない。
試しに、スティンガーは素手で石の壁が抉れる程に殴ると、石から真っ赤な血が吹き出してきた。
「おわぁ!?」
大量の血を浴びてしまったスティンガーは、慌てて後退りすると、イーグルは苦笑いしながら言った。
「な? オレも最初は同じ事をやって、血の洗礼を受けた事がある。それに、今破壊した壁を見てみろ」
スティンガーはコートで顔に付いた血を拭っていると、自分が空けた穴が見る見る内に自己再生して、最終的に元通りの石の壁になったが、スティンガーの背筋にヒヤリとしたものが走った。
何故なら、壁に血管のようなモノが浮かび上がっていて、ドクンッドクンッと、脈を打っていたからだ。
「さ、行くぞスティンガー、この程度でビビってたら、この先ついて行けないぞ?」
こんな事は先輩冒険者である彼等からしたら日常茶飯事なのだろうが、スティンガーは彼等に聞こえない声で呟いた。
「……チッ、こんなバケモノの中で平気な顔をして財宝集めとは、冒険者ってのは気が狂ってやがる」
とは言え、自分もその異常者達の仲間入りしてるのだ。今更後戻りは出来ないと思いながら、スティンガー達は二階層に降りた。
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