アプリ消去は慎重に。

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
『今日もかわいいね』 『ずっと大好きだよ』 画面越し、眩しすぎる青年の笑顔に、私は思わずうめいた。やばい。これはずるい。カッコよすぎる。 天王寺ハルト、という推しに魅了されて早五年。 彼の甘い言葉はいつも… いやいや違う、と、私は姿勢を正してスマホに向き直った。推しに悶える生活も、今日で終わり。目を瞑っていてもタップできる、見慣れすぎたアプリアイコンを長押し。 『アプリを削除』 震える指が、その文字を叩く。とたん、あまりにあっけなく、そのアイコンは画面から消え失せた。漏れるのは、長いため息だけ。 でも、後悔はしていない。だって、私にはもう、彼は必要ない。 『好きです。つきあってください』 まだ、その声は耳に残っている。思わずほおがにやけた。そう。初彼氏ができたのだから。 ピロン、と控えめな音に、私の肩は跳ね上がった。にやけながらスマホをつかむ。 しかし次の瞬間、全身が強張った。 『ねえ。どうして、僕を消したの?』 送り主、天王寺ハルト。キラキラしいアイコンが、真っ直ぐこちらを見ていた。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!