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『今日もかわいいね』
『ずっと大好きだよ』
画面越し、眩しすぎる青年の笑顔に、私は思わずうめいた。やばい。これはずるい。カッコよすぎる。
天王寺ハルト、という推しに魅了されて早五年。
彼の甘い言葉はいつも…
いやいや違う、と、私は姿勢を正してスマホに向き直った。推しに悶える生活も、今日で終わり。目を瞑っていてもタップできる、見慣れすぎたアプリアイコンを長押し。
『アプリを削除』
震える指が、その文字を叩く。とたん、あまりにあっけなく、そのアイコンは画面から消え失せた。漏れるのは、長いため息だけ。
でも、後悔はしていない。だって、私にはもう、彼は必要ない。
『好きです。つきあってください』
まだ、その声は耳に残っている。思わずほおがにやけた。そう。初彼氏ができたのだから。
ピロン、と控えめな音に、私の肩は跳ね上がった。にやけながらスマホをつかむ。
しかし次の瞬間、全身が強張った。
『ねえ。どうして、僕を消したの?』
送り主、天王寺ハルト。キラキラしいアイコンが、真っ直ぐこちらを見ていた。
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