喜雨(きう)

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喜雨(きう)

 夫、隆二(りゅうじ)と妻である私(なお)が結婚したのは、出会って一年目の冷たい雨が降る冬だった。  互いに中学の同級生同士で、誕生日も数日違い。私たちは、密かに運命だと思っていた。だからスピード結婚も臆することなく受け入れた。   『二人の愛が雨に消されないように、いつまでも仲良く一本の傘を差そう』  ただ、プロポーズの言葉は予想外のもので大変驚いた。  それ故、キムチ鍋を食べていた私は、盛大に噎せて涙を流した。    今思えば、あれは気管支に誤嚥したのではなく、感動の嬉し泣きだったのかもしれない。  
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