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慈雨(じう)
俺は本当は気が付いていた。
君が嘘を吐いて誤魔化しているけれど、本当は嬉しくて泣いていること。
それから、いつも君が言おうとしていることを、俺のために気持ちを汲み取って言わないでくれていることも。
それに甘えない俺でいたいけど、自分はこの世界で一番不器用だった。だから、その笑顔だけは大事にしたいと思った。
ただ、やっぱり俺は出来損ないの男だから、この先何をやっても怒らせることばかりするのだろう。
そんな俺だけど、これだけは誓うことにする。
「絶対に尚より一秒でも長く生きるよ」
君が濡れないように、そしてこの世界から君が生きた証を、一秒でも長く消さないために。
『傘』 END
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