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(そうだ、囮役にでもなんでもなりますからって言って、頼みこもうかなあ)
けど、すぐにアタシは首を横に振ってその考えを捨てた。
それはアタシのわずかなプライドが許さなかったから。
アタシはアタシの力で〈組合〉に入りたいんだ。
どんな仕事が待っているかなんてわからない。
それでもアタシは、アタシとして生きていきたい――。
「って、あれ?」
アタシのその気持ちに応えるかのように、手のひらのペンデュラムの水晶がまばゆく光りだした。そして少しずつ震えだす。
「ま、待って!」
ペンデュラムの鎖の先を掴んでいないと、その激しい動きで水晶がどこかへ行ってしまいそうだった。まるで言うことを聞かない犬の手綱を引っ張っているようだ。
「ま、待って待って!」
ペンデュラムに引っ張られるがままにアタシは走る。〈組合〉の試験の受付を通りすぎて走ると、ようやくペンデュラムの勢いは落ち着いてきた。
「なんだったの?」
するとペンデュラムの引っ張った先から一人の女の子が歩いてくるのが見えた。一拍遅れてその女の子がアタシに話しかけてきた。
「ねえ、そこの獣人のあなた。〈組合〉の加入試験の受付ってどこかしら?」
それは銀色の髪を左右に結び、金色の目をかがやかせたとても可愛らしい女の子だった。
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