第二話 入試キックオフ

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「ねえ、リオコ」 「なんでしょうか?」 「リオコはダンジョンに入ったこと、ある?」 「ないわ」  リオコはあっさりと答えた。 「え……じゃあ、これが初めてのダンジョン?」 「いいえ? 模擬ダンジョンでしたら何度か」 「そ、そうなの?」  リオコは平然と答える。 「だって、我が家にありましたもの」  アタシは絶句した。 (え? 模擬ダンジョンって、家にあるもんなの? それとも貴族ってみんなこう?) 「ああ、もちろんここほど広くはありませんでしたけど」 「あるだけですごいからね?」 「そうかしら」  リオコは自分が流浪人だと言っていたけれど、単にお嬢さまの家でという気がしてきた。  でも、模擬ダンジョンが家にあったということは、戦闘経験はあるのかもしれない。 「じゃあ、リオコは――」  アタシがまた話しかけたとたん、街の中心から大きな花火が上がった。  試験開始の合図だ――。  受験者たちが一気に散り散りとなっていく。入り口にとどまっているのはアタシたちだけだった。 「えっと、どうする?」 「どうする、と言いますと?」 「リオコはダンジョンの経験があるんだよな? 宝ってどうやって探す?」 「そうですねえ」  リオコはうでを組んで考えはじめた。 「まず宝が何かを考えるのが先でしょう。七つある、と言うのがヒントだと思いますので」 「ヒント?」 「ええ」  リオコはうなずくとキョロキョロと目を動かし始めた。 「あと、そうですね。まずはこの街を把握するのが良いでしょう。地図があれば良いのですが、なければ一度、街を歩いて回りましょう」 「分かった」  アタシは、自分よりずっと落ち着いたリオコに従おうと思った。するとリオコが一歩前に出てから「ああ、そうでしたわ」と何かを思いだしたように手を合わせた。 「私、あいにく方向感覚が皆無でして。なのでカリン、街を覚えるの手伝ってくださいます?」 「それならアタシが街の地理を覚えるから任せておきな!」  日雇い仕事で町中をかけめぐったり、周辺の町にまで出張していたアタシには地理感覚がそこそこ優れていると言える。自称方向音痴らしいリオコの役に立つぞ、とアタシは胸をたたいてうなずいた。
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