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今日、アタシは町でも安さで有名な武器商の店に来ていた。三日の日雇い仕事の疲れで頭は重たいし、食事もケチってたからお腹がグウグウなっている。それでも、明日に備えてなんとしてでも〈宝〉の武器……つまり〈魔宝〉を買っておかなきゃいけなかった。
「おじさん、金貨一枚で買える防御タイプの〈魔宝〉が欲しいんだけど!」
アタシは震える獣耳をピクピクさせながら、店主らしき丸い体のおじさんに駆け寄った。店内にいた冒険家たちが一斉にアタシを一瞥して笑うと、自分の探し物にもどって行くのが見えた。けど、アタシは今、恥ずかしいとかなんとか言ってられない。それに〈オヤジ〉も金貨一枚あればなんかしら買えるって言ってたもん。オヤジの言葉にウソはないはず――。
「はあ? 〈魔宝〉が欲しい? まともなのは金貨三枚からだぞ。一枚なんて、武器すらまともなの買えねえよ」
鏡を磨いていた店主はちらっとアタシを見たきり、鏡の方に視線を戻してしまった。
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