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「そんな……ここは安いけど良い武器がそろってるって聞いたのに」
「そりゃそうさ。利益より良いものを腕の立つ者に売りたいっていうのがこの店のウリだからな。でもな、小僧。今は物価高で、普通の武器さえ値上がりだ。それなのに〈魔宝〉が欲しい? いっそ自分でダンジョンでも潜って探してくるんだな」
店内からクスクスという笑い声が聞こえてくる。ダンジョンに入れないのを知っていてそう言ったんだろう。ダンジョンに入るには〈組合〉の資格がいるっていうのに。アタシは怒りをグッとこらえながらもう一度たのんだ。
「お願いだ。明日の〈組合(ギルド)〉の加入試験に、どうしても必要なんだ」
「おいおい、お前さん〈組合〉に入るつもりなのかい? やめておけやめておけ。町の用心棒で手いっぱいだろう?」
「そうさ、キミみたいな子どもの獣人が入る場所じゃないよ」
そう言って店内をずっと吟味していた、鎧でガチガチの大男がアタシを見下ろすと、手で払いのけた。その威力がすさまじくて、一発で壁まで吹き飛ばされてしまった。
「ちょっとお客さん、店を壊さないでくださいよぉ」
「すまんな、店主。こいつがあまりにも弱いもので」
大男は笑いながら麻の小袋と大きな盾を店主に差し出した。
「これで足りるか?」
「ははは、多いほどですよ。ありがとうございます」
大男が買った盾からは魔力が溢れていた。きっとあれも〈魔宝〉だろう。魔力のこもった質の良い材質で作られたものか、あるいは魔力のある宝石が埋め込まれているのだろう。そういう武器を〈魔宝〉という。
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