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「キミねぇ、そもそも〈魔宝〉を扱えるだけの魔力を持っているのかい? 普通の獣人は魔力を持たない代わりに強靭な肉体で戦う……。そういうもんだろ?」
店主はそう言って、壁にもたれかかっているアタシを見下した。
「ほら、帰った帰った。子どもはお家にお帰り。まあ、家があればだけど」
また店内から小さな笑い声がドッと聞こえてくる。さすがのアタシもカッとなった。
「もう、いい! こんな店に頼らなくたって、アタシは〈組合〉の加入試験に合格してやる!」
「ああ、そうしてくれ。無事に合格できたらこの店で一番の〈魔宝〉を祝いに送ってやろう」
「言ったな! 合格証を持ってまた来るからな!」
ついに店内の小さな嘲笑が大笑いに変わった。笑っていないのは入り口にたたずむフードの男ぐらい。でも、きっとアタシのことを笑っているはずだ。顔に出てなくても、心の中で、笑っているんだろう。
いら立つアタシは店のドアを乱暴に蹴って開けると、ドカドカと出て行った。
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