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「キミはやっぱり〈魔力〉が視えるんだね。やっぱりその髪色のせいかな?」
アタシは男から箱を受け取って中を見る。中身は小さな水晶のついた、銀色の鎖だった。
思わず首をかしげてしまった。
「これ、なあに?」
「〈ペンデュラム〉って知っているかい? 魔法使いや占い師の道具なんだ。これを振り子のように使って求めるものを見つけ出す」
アタシはその水晶のきらめきに目を奪われた。
「金貨三枚分の価値はあると思うけど、キミが欲しいなら金貨一枚で売っても良い」
「で、でも……」
アタシが欲しいのはあくまで〈防御タイプ〉の魔宝武器。でもこういうのは〈補助タイプ〉って言って、戦闘に直接効果があるわけじゃない。〈補助タイプ〉は戦闘前のダンジョン探索とかで役立つのが多いらしいけど、まだ〈組合〉に合格してもいないアタシが持ってたところで、これこそ「宝の持ち腐れ」って言うんじゃないだろうか。
でも……。
「分かった。金貨一枚でください」
なんでアタシはポケットから金貨一枚のなけなしの金でこれを買っているのだろうか。
「はい、どうも。じゃ、またね」
緑の長髪男はマントを翻して去っていった。すぐに男のすがたは人ごみに消えていく。
(だ、大丈夫だよね……)
アタシは木箱を放り捨てて、ペンデュラムをギュッと手ににぎった。水晶のひんやりとした冷たさが心地いい。
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