第1話 白いキツネの王子様

2/35
前へ
/192ページ
次へ
 止水は学校が終わると、まっすぐ家には帰らず、父親の店に寄った。 「今日はなにを飲もうかなあ」  現在、小学五年生の彼女。放課後は店の一階で飲み物を買って、二階でそれを飲みながら宿題をするのが日課だ。  止水は紙パックのりんごジュースを買うと、階段を使って二階へとあがった。そこには十名ほどの人間が利用できるだけのテーブルとイスがある。電子レンジや電気ポットなど、食べたり飲んだりするのに必要な電気製品もそろっていた。ウォーターサーバーは冷たい水とお湯が出る。ここで買った弁当をあたためたり、カップラーメンを作ることだってできるというわけだ。  二階は止水以外にだれもいなかった。一ヶ月前はいつ来ても他の客がこのイートインスペースにいるのが当たり前だったけれど、今ではいないのが当たり前となっている。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加