第1話 白いキツネの王子様

3/35
前へ
/192ページ
次へ
「うちのお店、つぶれちゃうのかなあ……」  小学生としても、ここのところ父親の店の経営状況がよくないのはわかっていた。うちの家はどうなるのだろう、家族三人は生活していけるのだろうか、と止水は子どもながらに一家の将来を心配する。  ふと、壁に貼ってあるポスターの、右上の角がめくれていることに気がつく。 「あっ、ポスターがはがれそう」  止水は立ち上がり、ポスターまで近づいた。めくれているところだけもういちど壁にぴたっとくっつけようとした時、壁に穴があいていることが見て取れる。  ポスターを取ってみると、穴は思ったよりも大きかった。小学生の止水なら余裕で入ることができる大きさだ。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加