第1話 白いキツネの王子様

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「わが国の豊穣な土と清らかな水で育ったものだ。味のよさは保証する」 「あやかしの世界の農業はすべて有機農業でごさいます」  沖豊が補足説明する。 「お父さん、有機農業ってなに?」  止水は友高に聞いた。 「化学肥料や農薬を使わずに栽培する、ってことだね」 「へえ! 安心で安全なお米や野菜が当たり前のように食べられるなんて、あやかしの世界はいいなあ」  止水はそれを自分たち家族だけで食べるのはもったいないのでは、と思いはじめる。 「お父さん、この野菜を店で売ったら?」  子どもながらに案を出した。自然のめぐみを生かした野菜をほしがる客がいるのでは、と。 「仕入れ値はなしでかまわない」  東温もつづけて言う。売れば、得た代金はすべて店の利益になるということだ。
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