第1話 白いキツネの王子様

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 すぐに中から人が出てくる。先に出てきたのは少年だった。年齢は十歳の止水と同じくらい。目鼻立ちのととのった顔をしている。同じ学校にこの少年がいたら、恋愛に夢中な女子の間で騒ぎになることだろう。  しかし、そんなことは止水に関係なかった。 「どこから入ってきたのよ! この、ドロボー!」  穴から出てきた人間が美しくてもそうでなくても、不審者は不審者だ。止水はいそいで用具入れからモップを取り出すと、柄の部分で少年の体をおもいっきりたたいた。  店の壁に穴をあけて、穴から侵入して、店の商品をこっそり盗もうとしている、と考えた。二階へははしごからのぼってきたのだろう。
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