第1話 白いキツネの王子様

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 止水が今度は少年の肩をモップで打とうとした時だった。突如、少年の両目が青白くなる。 「うっ……!」  それと同時に止水の体に異変が起こった。モップを持っている止水の手がまったく動かないのだ。手だけでなく、体そのものが動かせない。そして、自分の意思とは反対に、体が少年の方へと引き寄せられる。 「美しい――」  少年が止水を見てつぶやいた。こっちははげしく攻撃したというのに、まるで敵意を感じられない。うっとりとした目で止水を見つめている。 「えっ?」  少年は止水のあごを指ではさみ、ぐいと上げる。身長は止水より少年の方が十センチメートルほど高かった。止水が現在百四十四センチメートルだから、少年は百五十四センチメートルくらいだろう。
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