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「お主のような気高い女を、余は求めていた」
「お主? 余?」
止水はぽかんとする。「余」とは「私」や「僕」のような一人称であるのだが、日常では聞かないのでつゆ知らずだ。少年のしゃべり方は古風に感じる。着ているのが和服というのも違和感があった。
「申し遅れた。我が名は閑田東温。閑田家の次期当主だ」
少年あらため東温は、自分の家はだれもが知る家、という風な口ぶりだ。そう言われてもだれかわからないわよ、と止水は心で思った。
「なんと! 時空ずい道がこのような建物に通じていたとは!」
穴にいたもうひとりの人間が出てくる。老夫、年老いた男だ。顔は細長く、丸いメガネをかけている。気弱そうなおじいさん、と止水は思った。「ずい道」というふだん聞きなれない言葉は、トンネルを意味している。
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