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「止水! やけにさわがしいけれど、なにかあった?」
ちょうど、友高が二階へと上がってきた。体重が九十七キログラムの彼は、早足で階段をあがるだけでもハア、ハアと息を切らす。口のまわりをかこうヒゲにも汗をかいたようで、口もとを太い手でぬぐう。
「ん? わが家の畑をしょっちゅう荒らすイノシシに似ているな。人間界のイノシシは立ってしゃべるのか?」
東温が友高を見て言う。
「悪かったわね、イノシシに似ていて。この人は私のお父さんよ」
止水は言い返した。あろうことか、ひとめぼれした少女の親を悪く言ってしまった、と東温の色白の顔が青ざめる。
「なーにが『お主のような気高い女を、余は求めていた』よ。そのイノシシから生まれたのが私よ」
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