3章 足音…

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銀行に到着すると、すぐに支店長を含めた数人の銀行員が待っていた。 「水沼様、お待たせしました。どうぞ、こちらへ」 個室に通され、見せられたものは確かに会社のお金が、何者かによって引き出され、カレンゴという法人に振り込まれている履歴だった。 あまりに突然のことで沙絵は呆然としてしまう。 「どこ…?この法人、全く知らないわ…」 「全く取引のない法人様ですか?」 支店長の問いに、沙絵は「そう…ですね…」と力なく答えた。 付き添ってきてくれたモスアズの幹部が確認を取ると、これまで1度も取引のない相手だった。 「カレンゴってなんです?知らない会社ですね…。社長、しかもお金がカレンゴに流れているのも、俵さんが出社している時に限定されています。俵さんが関与している可能性も全くないとは言えません」 眉間にしわを寄せて、振込履歴と久のこれまでの出勤日を確認すると、どうしても送金された日と重なってしまう。 この事実を見て、沙絵は久を疑わざる負えない状況になってしまった。 仕事に困っている恋人を会社に入れて働かせてみたら、会社のお金をどこかに送っていたのかもしれない。 そう思うと、居ても経ってもいられなかった。 「この口座は一度利用停止にしてください。別の法人名義の口座で取引をしますので」 沙絵は即座にメイン口座を停止させるようお願いした。 「かしこまりました。手続きをしますので、このままお待ちください」 支店長と銀行員が部屋を出ると、沙絵はこの件に関して調査することを決めた。
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