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「興信所など使われますか?」
幹部からの提案を、沙絵はすぐに断った。
沙絵は、この調査を誰に依頼するか決めていたからだ。
「いえ、大丈夫。興信所よりもっと調査力のある“あて”があるので、その方にお願いしてみます」
「分かりました。ですが、事態は急を要します。どうか早く手を打ってください」
間もなくして、モスアズのメインの法人口座はこの事件が解決するまで利用停止となり、幹部たちへ、各取引先への手続きや事情説明などの対応の指示を出した。
そして、沙絵はすぐに“あて”としている人に電話をかけた。
「おぉ、沙絵ちゃん、仕事中だろ?どうした?」
「たっちゃん。多忙なところ申し訳ないんだけど、急ぎ調べてほしいことがあるの」
焦りを必死に抑えながら、言葉を続け、カレンゴという法人を調査してほしいとお願いした。
「カレンゴ…。そこにモスアズのお金が流れていて、彼氏の出勤日と重なってるのか…ふーん…。実はうちも危くカレンゴって会社に金持っていかれそうになって」
ジャッカルでも同じ被害に合いそうになっていたと聞いて、沙絵は動悸が収まらなくなった。
「普通に入社した社員で、うちの場合はちょっと違うやり方で金持ってかれそうになった。俺の方も調査しているところ」
「えぇ…」
「カレンゴという会社がどういう会社までかは分かったが、ボスが誰か分かってないから調査中」
「分かったら私にも教えてほしいんだけど」
「あぁ、構わないよ。なんか、他の会社でもカレンゴっていう法人に会社ごと奪われた元社長もいるし…。もう少し時間をくれ」
「分かった…久くんはどうしたらいい?」
頭の中が完全にパニック状態の今の沙絵には、経営者としての正常な即座な判断ができなかった。
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