4章 証拠

2/5

25人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
名義貸しは明らかに闇バイト。 お金に困った人や、何かしらの事情で働けない人が手を染めてしまうこともある。 「うちの方はゲーム課金用のプリペイドカードを会社の金で大量にまとめ買いしたりしようとした社員がいて、おかしいと思って、問い詰めたら…なぁ」 もう1人の役員、菊池が溜息をついてから口を開いた。 「そうでしたね。プリペイドカードを売った10%をキャッシュバックするからはじまり…危く会社の財産を全て持っていかれそうになりましたね」 「窓際部署行きにしようと思ったが、それをやると今の時代はヤバイから始末書何枚も書かせて自宅待機にさせてるけどな」 ずっと立ちっぱなしにさせていて、話が長くなりそうだと思った龍彦は、役員たちにコーヒーを淹れた。 テーブルに出すと、役員たちは龍彦にお礼を言って一口すすった。 一息ついたところで、龍彦が口を開き話が再開した。 「うちは被害を受ける前に食い止められることができたが、モスアズはなぜ被害を受けた」 役員たちに聞くも、しばらく誰も口を開かなかった。 龍彦はなぜモスアズがターゲットにされたのかは薄々気づいていたが、それは役員たちの口から聞いて確信に変えたかったのだ。 急に重たくなった空気を破り、モスアズを久が狙った理由を森本がはじめた。 「…申し上げにくいのですが、会長が亡くなるのを待ち、沙絵さんの心が折れるのを待っていたようです。会長が亡くなりメンタルが崩れた心の隙間に入れば、モスアズもうちの会社のお金も根こそぎ取れるだろうと考えていたと」 龍彦の読みは完全に合っていた。 「やはりそうか…沙絵さんは、会長…いやご主人が亡くなってから、心が癒えてないからな…。だから、かなり警戒はしていたんだけどな」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加