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愕然としながらも、自分の会社ではないが、沙絵から依頼を受けた以上はやり切るか、弁護士に依頼をかけるよう沙絵に伝えるか龍彦は悩んでいた。
困り果てている龍彦を見ながら、菊池は龍彦にこう言葉を投げ掛けた。
「…私が言える立場ではないことは承知していますが、モスアズもジャッカルも水沼夫妻にとっては、とても大切な会社だと思うんです。ですから、なんとかモスアズを助けて差し上げることはできないでしょうか?」
菊池は智則が生きていた時から、一緒に働きジャッカルを作ってきた社員の一人。
龍彦よりも先輩の役員に頭を下げられ、続けて同じく智則と一緒に働いてきた森本からも頭を下げられ、どうしたらいいか、龍彦は本気で悩みはじめてしまった。
ふとそこへ、ドアをノックする音が聞こえた。
森本と菊池ががふと顔を上げて、ドアに近づくと休憩に栄策がやってきたようだ。
休憩時間に社長室にくるのは栄策くらいだった。
「池中か、構わない入れてやれ」
龍彦の指示で菊池がドアを開けると、シリアスな空気に栄策はすぐに状況を察した。
「社長〜、すんごい怖い顔してどうしたんですか?…役員の皆さんも勢ぞろいで…ワタシいない方がいいですかぁ?」
部屋を出ようとする栄策を龍彦は止めて、栄策をソファーに座らせた。
「池中。君にも話しておかなければいけないから、メシはちょっと待ってほしい」
龍彦はこれまでの調査結果や、最近の沙絵の彼氏のことを栄策に話した。
驚愕の事実を知った栄策は、龍彦の腕を掴みながら、慌てはじめた。
「やっだぁ〜!大変じゃない〜。うちはなんとかなったけど、沙絵ちゃんまずくないかしら?」
役員たちは栄策のリアクションに多少引くも、すぐに龍彦の腕から手を離した。
「まずい…まずいだろうな」
コーヒーをすすると、龍彦は腕を組んでテーブルに広げられた書類にじっくり目を向けた。
すると、気になる写真が何枚か出てきた。
沙絵以外の女性と手を繋いで歩いている写真や、女性の家を出入りする様子が写されていた。
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