4章 証拠

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「この女は誰だ?」 「彼女?奥さん?」 龍彦と栄策がじーっと写真を見ると、菊池が、久の内縁の奥さんだと伝えた。 「どうやら、内縁の奥さんのようです」 龍彦は自分が睨んだ通りの結果になってしまい、再び大きく息を吐いた。 沙絵は知らないうちに不倫に巻き込まれ利用されていたのだ。 「車いすに乗った実の母親を介護しているというのも嘘で、23時頃帰宅していたのも、この仕事を続けていく上での工作ではないかと」 高橋が淡々と話す一方で、龍彦は苦虫を嚙み潰したような顔になりながら、頭を搔きまくった。 「複雑だが…いやいや…沙絵ちゃんをこのままにしておくとヤバいな…」 「報告は以上です」 高橋がタブレットを腕に挟むと、森本と菊池も帰り支度をはじめた。 役員たちはコーヒーを飲み干し、龍彦にお礼を言うと部屋を出て行った。 龍彦は智則の写真を、黙ったまましばらく眺めていた。 調査結果が分かったら、智則に窓際部署で報告をするという約束をしたことを、龍彦は忘れていなかった。 栄策はソファーに座り、調査結果の書類や写真に目を通していた。 「どう報告するよ…これ」 龍彦は溜息をつきながら、栄策に尋ねた。 するとあっさりした返事が返ってきた。 「う〜ん。そのまま報告しちゃってもいいと思うわよ」 「そう…そうだな。会長はなんとかなるかもしれないけど…沙絵ちゃんの方が」 龍彦はメンタルがガタついている沙絵の方を心配していた。 栄策も沙絵がこれから、久たちと向き合うことで、さらにメンタルが不安定になることを心配した。
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