5章 報告

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5章 報告

生前はそこまで緊張しなかったが、亡くなってから智則と会うのは、不思議な“距離感”があったからだ。 再びやってきた深夜の窓際部署の部屋の扉の前。 栄策と一緒に扉の鍵を開け中へ入る。 エアコンをかけていないのに、ひんやりとしている。 ほどなくして、智則が栄策に乗り移ったようだ。 「調査が終わったのか」 口調や表情が冷静さの後ろに心配など、複雑な感情が見え隠れする。 窓際部署のドアの前にいた時とは、全く違う。 明らかに、智則の気配だった。 龍彦は、調査報告書を智則を見せ、一連の報告をした。 サラッと目を通すと、智則はすぐに報告書を返した。 かなりの情報量にも関わらず、智則のあっさりした感じに、龍彦は驚きを隠せなかった。 「もういいんですか?」 「あぁ、十分分かった」 「もしかして…沙絵さんの様子をときどき見てたとかあります?」 すると、智則はドキッとするも「そうだ」と答え続きを話してくれた。 「ほとんどの人間には姿が見えないから、沙絵がデートに行く時に男の顔をチェックして、デートが終わって別れてから男の後を追っていた」 「なるほど。会長は俺たちが調査する前から、薄々気づいていたんすね」 「だが、今の俺がいくら言ったところで、信憑性もない。だから調査をお願いしたんだ。想定していた通り、沙絵の方はやられたしまったようだが…」 今度は、悔しそうな悲しそうな表情を浮かべる智則だが、お金に関する被害が最小限に収まったことにはホッとしているようだ。
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