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龍彦が挨拶をして間もなくすると、栄策はドンと椅子に座り込み、そのまま机に顔を伏せた。
智則に体を貸してパワーを使い果たしたのか、意識がなくそのまま寝ているようにも見えた。
「栄策、お疲れ様。それと、ありがとな。ちゃんと会長に報告できたぜ」
自分の着ていたスーツのジャケットを栄策の肩にかけ、龍彦も窓際部署で一緒に仮眠をとった。
一夜明け、栄策が目を覚ますと、龍彦はまだ寝ていた。
時間は朝の8時。
早い社員だと、もうすぐ出勤してくる時間だ。
栄策は龍彦の肩をゆすって起こした。
「ん?あー、もう朝か。おはよう」
龍彦は大きなあくびをしながら背伸びをした。
「おはよ〜。たつひこちゃん、ここで寝てたの?」
床に座って壁に寄りかかって寝ていたせいか、腰を上げた瞬間にグキっと音がした。
「いててぇ…そうだよ。会長が栄策の体を借りて話してくれたけど、パワー使い果たしたんだろ。そのまま椅子に座って机に伏せて寝てたぞ?心配だからここで仮眠取ってた」
あからさまに驚いた顔をして、ポケットに入れていたコンパクトで自分の顔と髪型をチェックする。
「浮腫みとか~、メイク崩れなしね♪」
「え?メイクしてたのか?全然気づかなかった」
「毛穴とか気になるじゃない?だから、BBクリームとか塗ってるのよん☆」
「へぇ〜。男の美容ね」
話の途中で龍彦は腕時計をなんとなくみた。
時刻は8時半を指していた。
「やっべ‼そろそろ、社長室にいないと‼秘書が9時にくるから、窓際部署にいたことがバレたら騒ぎになる」
龍彦は、慌ててジャケットを羽織り、社長室に戻ろうとする。
「ちょっと待って」
「なんだよ‼」
急いでいる龍彦は、栄策に呼び止められイライラしはじめた。
「沙絵ちゃんのところにいくときは、ワタシもいくから。連絡ちょうだいね」
「分かってるよ。じゃ、戻るから!栄策も早く帰宅した方が良い」
「はぁ~い☆今日は休みなので、ゆっくりさせてもらいますね~。たつひこちゃん、またね♪」
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