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6章 乱入と騒ぎ
2日後の水曜日、沙絵はモスアズ本社に出勤してきた久に、経理の管理がどのようになっているのか、会議室で話を聞くことにした。
お昼も過ぎた14時半頃役員2人がいる会議室でも、久は何も緊張もしていなかった。
しかし、久は何を聞かれるのか察したのか、話し合いの前から変な汗をかきはじめている。
沙絵と役員が椅子に座った後に、ガタンと椅子をひいて座った。
表情も固いようなヘラヘラしているような、いつもと様子が明らかにおかしい。
「俵くん。お仕事には慣れましたか?」
沙絵から形式的な質問をすると、久は「いつも話してるから把握しているはずですが笑」と答える。
「俵さん、ふさざけないで真面目に答えてください」
強面の執行役員に注意され、嫌な顔をする久だが、
「社長に声をかけて入れてもらったんですよ?それなのに、なぜこんな場に呼ばれるのか僕には理解できませんが…」
とぼける久に、沙絵はやんわりと質問を投げかけた。
「最近、俵くんが出勤した日だけ、会社のお金が数百万ずつなくなっているのはなぜでしょうね」
沙絵の質問に、久は周りをキョロキョロと見渡した。
自分が疑いの目で見られている事に、耐えられなくなってきたのだ。
「…僕…?みなさん、僕を疑っているんですか?仕事の様子は役員のみなさん、経理を管理する人、そして社長もちゃんと見てるはずです。その状況で…僕が会社のお金をどうやって数百万も持っていくんですか?」
あくまでも自分がやっていないと言い切る久。
久が別の口座に、お金を送金した証拠は今のところどこにもない。
容疑をかけることはできても、それ以上のことは何も言うこともできない。
沙絵は、様子のおかしい久に、こう言った。
「私は、俵くんが出勤している時に数百万ずつお金がなくなっていると言っただけで、あなたが会社のお金を使ったんじゃないかっていう疑いはかけていませんよ?」
久はしまったと思わんばかりに、さらに落ち着きがなくなりはじめていた。
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