6章 乱入と騒ぎ

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「俵さん、どうされました?…体調でも悪くなりましたか?」 役員に質問されるも、そんな声は久には聞こえていなかった。 久は立ち上がり、ウロウロしながら、この場をどう乗り切るか、自分がこの事案に関係していないと、どう言い返すか考えた。 そして、突然、沙絵たちに向かって、会議室全体に響く声で目を見開き、目頭を熱くさせながら、こう言い放った。 「もうひとり、経理の人間がいる!!そいつが会社の金を降ろしたんだろ!!!」 唇を震わせ、一瞬にして沸騰したような久の呼吸は荒く、ぜぇぜぇとさせていた。 その様子を見て、一瞬沙絵も驚くが、久に落ち着くように言葉を添えたあと、さらに言葉を続けた。 「俵くん、もう一人の経理の人にも確認を取りました。でも、会社のお金の流れがおかしいことに気づいたのは、もう一人の経理担当です」 強面の執行役員のほかに、もう一人、中肉中背の七三分けの普通のサラリーマン風の男性の執行役員が、久が慌てるのを見て、追撃の質問を飛ばした。 「あなたが気づかないのは、少し納得いきませんね」 窮地に追い込まれ、久は「体調が悪くなったので帰りたい」という。 役員と沙絵たちは、会議室を出ようとした久を止めようとするも、肩を振りほどかれ逃げるように出て行った。 久がクロに近いことは間違いないのに…逃してしまったと全員ががっくりとした矢先、会議室のドアを勢いよく開けてきた。 ドアを開けてきたのは、会社の警備員だ。 「大変です!社長!本社の玄関の前で奇声をあげる女性がいます。社長を出せと…」 「えぇ?」 慌てふためく沙絵に追い打ちをかけるように、本社の前で騒ぎが起こっているとの報告だった。 しかも、それは、ただの騒ぎではなかった。
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