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「何言ってるの?傷ついたのはこっちよ!!」
手を振りほどこうにも、美佳の手首を押さえる力が強いのか、全く動かない。
しばらく抵抗するも、諦めたのか美佳は腕の力を抜いた。
暴力行為は止めたものの、美佳の口だけは収まらない。
「人の夫を寝取っておいて、よく平気でいられるわね…!謝らないなら世間に不倫をバラすわよ?大きい会社の有名な社長さんが、社内不倫してました…なんて知られたら大騒ぎね笑 あなたのブランドも泥だらけになっちゃうわね笑!!」
「落ち着けよ、美佳…」
久が美佳を宥めようとするが、美佳の怒りのボルテージはマックスまで行っていた。
「アナタ…アナタはこの女に騙されただけでしょ?騙されて付き合わされたんでしょ?会社もやめて、こんな会社に入れられちゃって…」
「溝田(水沼)さんにきちんと誘われて入れてもらったんだ。ちゃんと話しただろ?」
久が使い物にならないと思った美佳は、ヘラヘラしながら、会社中に聞こえるように、大声で喋りだした。
「みなさ~ん!溝田…水沼沙絵社長はうちの夫、俵久を寝取り、挙句の果てに自分の会社に入れて社内不倫までしてました笑!!」
美佳が叫ぶと、さらに、野次馬にざわめきが走り、本社の窓を開けて顔を出してくる社員まででてきた。
自分がしていないことを、叫ばれ、沙絵も黙ってはいられなかった。
「私は…不倫なんかしてませんよ!!どういうこと?…ちょっと待ってよ!!!」
突然ビンタされ、久が結婚していると知り、会社の前で不倫女と叫ばれどうしていいか分からなくなる。
頭の中が一気に混乱し、「もし、智則さんがいたら、こんな状況をどう乗り切るんだろう」と心の中で智則を探していた。
「溝田沙絵社長から慰謝料を請求しま~す笑 3,000万くらいもらってもいいですよね~笑」
美佳のドロドロなパフォーマンスがずっと続いて、沙絵が精神的に追い込まれたタイミングで、聞き覚えのある男2人がやってきた。
「それはちょっと高すぎねーか?」
「やだぁ~、騙してさらにお金とろうなんて…胸糞悪いわねぇ~」
モスアズの本社前に現れたのは、黒で統一されたスーツ姿に、髪型はいつもと違うオールバッグで、パソコンを入れたリュックを背負った龍彦と、ピンク色のトレーナーに、カーゴパンツ姿の栄策だった。
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