6章 乱入と騒ぎ

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緊迫した状況でも、龍彦は腕時計で時間をチェックした。 2人が間に入った時間は15時前後を指していた。 栄策が伝えてきた時間通りで、モスアズ本社の前は人、人、人だらけ。 どうすることもできず、混乱する沙絵を見て、栄策が傍にいき、龍彦が美佳の前に立った。 「沙絵ちゃん…もう大丈夫よ。智則さんもきっと助けにきてくれてるはずよ。安心して」 「…すみません」 泣きそうになっている沙絵から絞りだされた、精一杯の言葉だった。 龍彦は睨みをきかせながら美佳を見下ろしている。 怒りに満ちた龍彦の威圧に負けたのか、美佳は急に口を閉ざした。 「お前…俺の会社にまで足つけようとしたな…全部調べはついているんだ…」 低くく太い声には、怒りだけでなく、憎しみの感情も込められていた。 「は…は?なんのことか、さっぱり」 体を小刻みに震わせながら、とぼける美佳に、ニヤりとして、 「ほぉ…笑 だったら、どこか部屋借りてじっくり話そうぜ。 真実を見せてやるよ…‼」 智則に頼まれ、龍彦はこの数か月多忙の中で俵家のことを調べ上げた。 「全く…亡くなった会長といい、沙絵さんといい…似たようなことで手間かけせさせんなよ」 龍彦は、背中を見せたまま沙絵に言葉をかけた。 その姿は智則の背中にも見えた。 「龍彦さん…あれ…智則さん…?」 「危ねぇところだったな…だがもう安心しろ」 龍彦の背中に、沙絵は智則の姿が重なって見えたような気がした。
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