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「あなたは、俵久さんの奥様ですか?」
龍彦が改めて確認すると、美佳は自分が久の妻だと言った。
一呼吸おいて、龍彦はパソコンと封筒に手を置いて、話を進めた。
「さて、このパソコンとテーブルに置かれた茶封筒の中には、水沼沙絵さんからご依頼された調査の結果が入っています。まず、俵さん、あななたちは籍を入れていない、事実婚状態ですよね?」
龍彦からの直球の質問に対し、久は「そうですけど」と龍彦から目線を向けずに無表情で答えた。
不倫に巻き込まれていたことに薄々気づいていた沙絵だったが、事実だと分かった瞬間に涙が零れ始める。
「これが、証拠写真です。あななたちが一緒に住んでいるという証拠です」
沙絵が一番見たくない写真だったが、龍彦が出した写真は確かに、美佳と久が一緒に行動しているところを写していた。
美佳と久がスーパーに買い物に行ったり、同じアパートに出入りしている写真が出てきた。
写真を確認したところで、龍彦はさらに本題の根っこに突っ込んだ。
「さらに、これは、水沼沙絵さんから、特別に許可を得て提供してもらった証拠です…モスアズからカレンゴにお金が流れています。これも、あななたちがやったことですよね?」
お金を流していることを尋ねられると、久は再びすっとぼけはじめた。
「そんなことしてませんよ、そもそもカレンゴってなんですか?」
「本当ですよ、聞いたことないですし!…私たちを悪者にしたいの?」
感情的に否定する美佳を見て、2人がやったことは間違いないと龍彦は確信が持てた。
しかし、ここで感情に流されずに話を進め、相手を追い込んでいくのが龍彦のやり方だ。
龍彦は、淡々と話を続けていった。
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