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「私は知りません。カレンゴのこともモスアズのことも…私は今日初めて聞きました。私には何も関係のないことです」
「旦那さんが追い込まれて、急に他人のフリっすか。酷い奥さんですね。戸籍上婚姻届けを出していない、事実婚夫婦であっても、僕はあなたのことも逃がしませんよ?」
「そうね〜。今逃げても~、後で捕まっちゃうかもね~」
栄策と龍彦以外の3人は俯いていて、沙絵はただ泣くばかりでまともに言葉を発することができなかった。
龍彦は、「ふぅー」っと息を吐いて、お茶を一口すすってから、久に諭すような目と声で、こう言った。
「そうですね。久さん、あなたの口から本当のことを話してもらえると、こちらもこれ以上調査をしなくてすみます。これ以上調べを進めるようだと“裏を取る”必要が出てくるかもしれないので」
再び少し沈黙する時間が続いた。
美佳は久が喋ってしまうかと思い、気が気ではなかった。
しかし、久は諦めかのように口を開き、事の全容を語りだした。
「今まで、沙絵さんに話してきたことは…全て嘘です」
ハッとして沙絵は顔を上げた。
泣いてばかりの沙絵の顔はメイクが落ち、顔中が涙で濡れていた。
「…私のことが好きだってことも、結婚したいってのも…嘘だったのね…。何狙いだったのよ!やっぱり私の財産?モスアズのブランド?」
沙絵のかすれながら、震えるような声で、沙絵は、久に問いかけた。
「…沙絵さんのモノ全部…」
「お金と会社丸ごとでしょ?ハッキリいいなさいよ!」
喉の奥から声を押し上げるようにして、久を問い詰めた。
久は「そうです。間違いありません」と虚ろな目で沙絵を見ながら答えた。
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