最終章 泥沼の決戦

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「モスアズは私が、若い時から大切に大きくしてきたものなの!絶対渡さない。私じゃなくて、私の財産目当てだったなんて…酷い」 沙絵は、まだ言いたいことがあるが、感情が溢れ、伝えたいことが、頭の中でぐちゃぐちゃになってしまった。 それを見た龍彦はすぐに、沙絵が一呼吸おけるように、助け船をだした。 「沙絵さん。僕と神谷くんがいますから、安心して言いたいことは言っちゃっていいんで。落ち着いて…冷静に頭の中で伝えたいことをまとめてください」 沙絵は龍彦を見て頷き、冷めてしまったお茶を何口か飲む。 そして、深呼吸を何度かしてから、さらに畳みかけるように、久に問い詰めた。 「智則さんの会社まで取ろうしたって…本当なの?」 ここで、久はうじうじしはじめたので、美佳が口を開いた。 「アンタはね、絶好のカモだったの笑 アンタのことを徹底的に調べあげたら、夫婦で別々で大きな会社をやってるってデータが出ちゃってね〜。今は水沼智則っていう人初代社長は亡くなって、2代目の社長がいるみたいだけど」 「…そうですが…」 沙絵が答えるなり、美佳のまくし立ては留まるところがない。 美佳の勢いに圧倒され、沙絵は言葉を返すどころか、体を動かすことすらできなくなった。 「アンタに取り入れば、お金を全部巻き上げられると思ったのよ笑 いいじゃない!お金のない庶民に少しくらいお金を譲ってくれたって笑…今まで贅沢な暮らししてたでしょ?困らないでしょ。私たちは、お金を取ったことも認めない、騙したこともね…笑」 美佳は沙絵の近くに回って顔を近づけて、さらに話を続けた。 そこへ、栄策が笑顔で割って入った。 その笑顔の下には、闇の部分も含まれていた。 これ以上沙絵に美佳が近づけば、美佳が沙絵に危害を及ばせると感じたからだ。
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