最終章 泥沼の決戦

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涙腺に涙を溜めたまま、美佳をギッと睨みつける。 会場全体がひんやりとした空気が流れる。 この空気は、智則が降臨している証拠なのだ。 「テメェはカレンゴという会社を他のやつに作らせ、そこから金を引っ張ってきただけだろ…しかも、同じことは1回2回じゃねぇ…何度もやってきたんだろうか…この虫食いババアが…!」 さすがにまずいと思い、龍彦は沙絵に近づこうとしたが、栄策が手を出して止めた。 栄策がサッと手を出して龍彦を止めることは滅多にない。 「沙絵ちゃん普通じゃねーぞ?」 龍彦が栄策に耳打ちすると、栄策は「ふふふ」と含みのある笑いをしてから、龍彦にこう言葉を続けた。 「大丈夫よ。会長がついていらっしゃるから」 「は…?!…はぁ…」 納得のいかない龍彦だが、しばらく様子を見ることにした。 「裏社会と繋がっていることは分かっているんだよ…それと、今までやってきたことは全て犯罪だ…カレンゴをやってきた人間が捕まるのも、お前らが捕まるのも時間の問題だ…」 ここまで智則が美佳に詰めると、美佳はようやく真実を話し始めた。 「…そうよ。わたしたちは、今までずっとカレンゴという会社に雇われ、いろんなところからお金を引っ張ってきて、お金を送金して、そこからいくらかバックをもらってただけよ!それの何が悪いのよ!!」 美佳が泣き叫ぶも、それを上回る重みのある声で、美佳を精神的に追い込んだ。 「お前ら夫婦2人がやったことだろ!落とし前はどうするんだ!」 沙絵の強い口調に、周囲はびっくりし、俵夫妻はビビりだす。 「悪いことは…いづれはバレる…美佳…一緒に警察へいこう…全て話そう…」 久は肩を落としながら、美佳の元へ歩いて行った。 美佳は「ここまでか…」と言わんばかりに、全身の力が抜けたのと同時に、泣き始めた。 龍彦はパソコンと証拠資料を片付けた。 話が終わると、智則は沙絵の体から抜けた。 「…あれ?なんで美佳さん泣いてるの?」 智則が完全に沙絵の体を一時的に支配していたので、俵夫妻に何を言ったのか覚えていない。 沙絵は周りをキョロキョロと見るが、龍彦はグッドのサインを沙絵にした。 しかし、沙絵には何が良かったのか全く分かっていない。 「沙絵ちゃん。お話し合いは終わって、俵夫妻が、沙絵ちゃんを騙してお金を取っていたことを認めてくれたのよ」
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