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「……か…か…かい……ちょう…???」
「そうだ。水沼智則だ。今は池中くんの体を借りて喋っている」
「そんな馬鹿な…会長の演技をしているだけだろ?」
唇を震わせながら、龍彦は栄策ではなく智則が喋っているのでないかと薄々気づきつつも、まだそんなわけはないと自分の頬を叩いた。
「もし、演技ではなく、本当に会長なら、この質問に答えてください。そうしたら信じます」
「なんだ。あれか?会社を立ち上げた時の最初に作った長文のパスワードか?」
まさに自分が質問しようとしたことを、智則に先に当てられ、智則は当時作ったパスワードをスラスラと読み上げた。
当時は誰も覚えることができず、結局龍彦と智則しか覚えることができなかったので、2人の秘密の暗号化していた。
言い回し方、話し方、当時のパスワードを読み上げたことに、龍彦は今喋っている人は栄策ではなく、智則だと確信した。
「かい…会長…。お久しぶりです」
龍彦は全身を震わせながら、智則に頭を下げた。
ひんやりとした空気が流れる中、智則は1つしかないチェアに腰かけた。
足を組んでズボンのポケットから缶のブラックコーヒーを投げて渡すのも、若い頃の智則が龍彦だけによくやっていた行動だった。
投げられた缶コーヒーをキャッチして、なつかしい…と龍彦はぼやいた。
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