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2章 不穏
久と沙絵との交際がはじまり、1年が過ぎた。
智則が亡くなって6年目。
2人の交際は順調に進んでいるものの、相変わらず義母に会わせてはくれなかった。
変化はそれだけではなく、久の羽振りがよくなっていることも心配だった。
モスアズに入ってから、どの社員にいくら給料を払っているかは全てデジタルで管理されている。
久の給料も見ようと思えば、沙絵はいつでも見ることができた。
怪しく思った沙絵は、久の給料明細や出勤状況などを確認する。
「う~ん。ちゃんと週3日6時間勤務してるわね。給料も昇給とか今のところないけど、ボーナスは出してるしね~」
特におかしなところがないので、沙絵は久のデータを見るのをやめた。
「もしかして…久くん、副業でもはじめたのかな」
今までお金に困っていて、急にお金が増えるとパーッと使いたくなってしまう気持ちも分からなくはない。
とはいえ、毎回のデートで3万~10万も使うのはあまりにおかしいと感じていたのだ。
「私が忙しいから、会える回数が少ない分デートの時はたくさん使いたいのかもしれないけど…どっかからお金借りてるとかないよね…?」
1人沙絵が悩んでいると、龍彦が会った“デッカイおばけ”がやってきた。
「久を経理にしたおかげで、久はモスアズの金を使い込みはじめている。早く金の動きを調べろ」
しかし、沙絵には智則の声は全く聞こえていない。
沙絵「随分前に、経理をひとりで預かっている人が会社のお金を使い込んだなんてニュースあったけど…まさかね~!」
「そうなんだって…沙絵…気づけ…」
「ちょっと、最近お金使いすぎてない?って聞いてみるか~」
「ダメだ…細身から伝えてもらうしかなさそうだ…」
“デッカイおばけ”はどこかへ消えて行ってしまった。
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