おはようじょ。

1/1
前へ
/1ページ
次へ

おはようじょ。

 朝起きたら幼女が居た。  久々の帰省で、飲みすぎたか?  いや、たしか幼女を預かったような。  特徴的な丸い目が開き、オレを見る。 「おはようございます」 「うん。おはよう」    ああ、近所の白石さんの娘さんか。  名前はたしか、ユマちゃんだったはず。 「今年で9歳になります」って、紹介してもらったんだよな。  白石さんは、姉が中学だった頃の同級生だっけ。  昨日ふたりが飲んでる間、オレの部屋でずっと相手をしてあげたんだよな。  寝かしつけた後、オレも疲労困憊で寝ちまったんだ。  今後は仕事のシフト、減らしてもらおう。  一緒に、リビングへと降りる。  こたつテーブルに、書き置きがあった。 『買い物に行くから、面倒見てあげて。あんたに懐いてるんだよね』 『お願いします。ゴハンはなんでも食べます』    二人分の書き置きを見つけて、オレはエプロンを腰に。 「おなかすいた」  うん。朝だもんな。   「何が食べたい?」 「パンケーキ」  おお、いつもそんな豪華なお食事なんだろうか。  それにしてもパンケーキって渋いな。ホットケーキじゃねえんだ。 「おかずパンケーキかい? それとも、甘ーいホットケーキ?」 「えっとね、ベーコンと卵」 「う、うんうん。だいたいわかった」  おかずパンケーキね。了解。  でも、パンケーキなんて団塊世代のばあさまの家にあるかしら?  パントリーから奇跡的に、パンケーキミックスを見つけた。おふくろに、大感謝だ。 「ママはね、あさはね、アーモンドを八つぶしかたべないの」  食事を作っている間、。    それが、『できるおんな』のモーニングルーティンなんだとか。 「お、おう」  単に、『プラダを着た悪魔』の影響だな。できるオンナを真似るだけ、まだエラい。 「本当にできるオンナは、シリアルを測って食うんだぞ~」なんてマウントは、取らないでおく。  ユマちゃんは、ホットケーキミックスを凝視していた。 「ホットケーキはどうする? お望みとあらば、作ってやるぜ」 「パパがね、『迷ったときは、りょうほうえらべ』って」 「お、おう」  じゃあ、両方お作りいたしますよ、お嬢様。 「量が多いから、おじさんと半分こにしようなー」 「うん!」  いいお返事だ。 「できたぜ」  リクエスト通り、ベーコンと目玉焼きつきのパンケーキを差し出す。  小皿には、半分こしたホットケーキを。バターとはちみつは、たっぷりと。   「いただきます」 「いただきましょう」  ソースをドバっと掛けて、ユマちゃんは目玉焼きとベーコンもろとも、パンケーキを切って口の中へ。  そこで、オレはハッと気づく。 「待てよ。パンケーキだったらスクランブルエッグか! おじさん、やらかした?」 「大丈夫。おいしい」  えへへ、とユマちゃんはうれしそうにパンケーキを頬張る。  たしかに、なんでも食べるって言っていたな。 「こんなにおいしいゴハンが作れるおじさんは、きっとモテモテ」 「全然! オレなんて彼女いない歴=年齢おじさんだからな」 「ホント?」  なに、そのうっとりした目は?  「ごちそうさま。おじさん、だいすき」    それは、食べないほうがいいと思うぞ。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加